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2025.12.23

医療分野における歯磨きに関する技術

はじめに

私たちが日常的に行っている歯磨きは、単なる生活習慣ではなく、医療技術としても継続的な進化を遂げています。虫歯や歯周病の予防はもちろん、診断や治療、さらには個々の使用者に合わせたケアを実現するため、歯磨きに関連する技術は成分設計、装置、評価手法まで幅広い領域で研究開発が進められています。

本技術レポートでは、日本の特許公報1,634件(2005〜2025年、日本公開特許公報)を対象としたRadar Tech Intelligenceの解析結果にもとづき、医療分野における歯磨きに関する技術の全体像を俯瞰します。

全体俯瞰

図1:医療分野における歯磨き関連技術の全体俯瞰

図1は医療分野における歯磨き関連技術の全体像を表した俯瞰図です。この俯瞰図では、特許の内容が近いもの同士をマップ上で近くに配置し、特許が密集している箇所を主要な技術領域として示しています。

特徴語の上位には、「口腔」「ケア」「フッ化」「歯磨」「歯ブラシ」「配合」「細菌」「ポリマー」「治療」「界面活性剤」「製剤」「歯科」「研磨剤」などが挙げられます。これらの語が示すように、歯磨き技術は単なる清掃行為ではなく、口腔内環境の制御や疾患予防、歯質保護を目的とした医療技術として体系化されていることが読み取れます。特に成分の配合設計や微生物制御、研磨剤設計が中心的な技術軸となっており、化学的作用と機械的作用を組み合わせたアプローチが主流であることが俯瞰的に示されています。

俯瞰図上では、研磨性シリカを基盤とした歯磨剤組成の改良に注力する【組成物 ,口腔ケア組成物 ,研磨剤】領域(259件)が中心付近で大きな領域として存在しています。その他、中心から左側には甘味・清涼剤の配合最適化、粘結剤や粒子径制御による使用感改善と保存性に関する【エリスリトール ,配合 ,清涼感】なども見られます。

主要プレイヤー

特許件数の観点から主要プレイヤーを見ると、日用品・ヘルスケア業界の大手企業が本分野を牽引していることが分かります。コルゲート・パーモリブは長期間にわたり多数の出願を行ってきた一方、直近では出願が停滞しており、既存技術の成熟が示唆されます。P&Gは近年の出願増加が顕著で、成分設計や機能強化に対する継続的な投資姿勢が読み取れます。花王やライオンは過去に一定の出願実績を有するものの、直近では活動が減速しています。

一方、電機・医療機器系ではフィリップスやパナソニックが装置関連技術で存在感を示しており、化学メーカーではBASFがポリマー設計や物性制御を軸とした安定的な出願を行っています。このように、業界ごとに注力領域が分かれている点が本分野の特徴といえます。

時系列トレンドとキーワード

時系列の解析からは、歯磨き技術が成分改良中心の段階から、より高機能かつ個別対応型の技術へと移行してきた様子が確認されます。

「組成物」「研磨剤」といった基盤技術は長期にわたり安定した出願が続いている。また、porphyromonas(口腔細菌)といった病原微生物制御に関する領域は2010年代後半に出願が活発化したが、直近で大きく減少しており、特定の病原菌に対する治療法への関心が薄まっていることが示唆されます。

全体として、技術的な動きとしてフッ化やポリマーによる細菌制御と個別化・高機能化、疾患予防や生体調和性重視の新素材導入へ移っている傾向が見られます。

まとめ

医療分野における歯磨き関連技術は、従来の器具や成分中心の従来から、使用者体験やIoT・自動化、先端素材応用へと転換しています。俯瞰的に見ると、成分設計や研磨剤といった基盤技術が安定的に継続する一方、診断や微生物制御などの応用技術は成熟段階に入りつつあります。主要プレイヤーの動向からも、今後は使用者体験や医療との連携を意識した技術が重要となることが示唆されます。

歯磨きという日常的な行為は、今後治療支援も含めたより総合的なサービスとして我々の生活に組み込まれていくかもしれません。